デミ・ムーアが、映画『The Substance(原題)』で美と若さに対し狂気と呼べるほどの執着を見せる元トップスターを演じ、第82回ゴールデン・グローブ賞で女優賞(コメディ&ミュージカル)を初受賞した。「まったく期待していなかったので、衝撃を受けています。もう45年以上、長くこの仕事をしていますが、俳優として賞を獲得したのはこれが初めてです。恐縮するとともに感謝の気持ちでいっぱいです」と感極まった様子でスピーチした。
1月5日(現地時間)、ビバリー・ヒルトン・ホテルで開催された授賞式でトロフィーを手にしたデミは、30年前にあるプロデューサーから「ポップコーン女優」というレッテルを貼られたと明かし、こう続けた。
「当時、私はこうした賞とは無縁だと、ヒット映画に出演し大金を稼ぐことはできても、賞を贈られるようなことはないと決めつけてしまいました。その思いは時とともに私を蝕み、数年前にはこれでおしまいだ、これ以上飛躍することはない、これ以上することはないと思うに至りました。そんなどん底の状態にあったとき、この魔法のような、大胆不敵で型破り、まさに狂気とも言える脚本が私の元に届きました。タイトルには『The Substance』とありました。まだ終わっていないという天のお告げでした」
そして、彼女の分身を演じたマーガレット・クアリーや、長年彼女を信じてくれたという関係者に感謝を述べ、こう締めくくった。「この映画では、私たちが、十分賢くない、十分美しくない、あるいは細くない、成功していないと思う、つまり不足を覚える瞬間を捉えたものだと思います。ある女性から、『十分だと感じることはこの先も決してないけれど、物差しを手放せば自分の価値を知ることができる』と言われたことがあります。ですから今日、不足のない私自身と、私を駆り立てるものへの愛、愛する仕事をできること、そしてその一員であることを思い出させてくれたことに感謝し、この賞を祝いたいと思います。ありがとうございました」
フランス出身のコラリー・ファルジャが監督と脚本を⼿がけた本作は、第77回カンヌ国際映画祭で脚本賞を獲得。デミ・ムーアは50歳を超え、容姿の衰えとそれによる仕事の減少から、ある新しい再⽣医療に⼿を出す主人公エリザベスを演じている。
Text: Tae Terai